Serge Mouille

Serge Mouille セルジュ・ムーユ

1922-1988   France
20世紀を代表する照明デザイナーとして知られる Serge Mouille(セルジュ・ムーユ)は、フランスの戦後デザインを象徴する存在のひとりです。
1922年にパリで生まれ、École des Arts Appliqués(国立高等装飾美術学校)で金属加工と銀細工を学び、1945年には自身の金属加工工房 Les Ateliers Serge Mouille(レ・アトリエ・セルジュ・ムーユ)を設立。職人として培った金属加工の技術を基盤に、家具や装飾品の製作から照明デザインへと活動を広げていきました。

1950年代初頭、Jacques Adnet(ジャック・アドネ)から照明器具のデザインを依頼されたことをきっかけに、照明デザイナーとして本格的に活動を開始します。1953年頃から発表された一連の照明作品では、細身のスチールアームと手作業で成形したアルミニウム製のシェードを組み合わせ、必要な場所へ光を導く機能をそのまま造形へと昇華させました。1956年にパリの Galerie Steph Simon(ギャラリー・ステフ・シモン)で作品を発表すると、Jean Prouvé(ジャン・プルーヴェ)や Charlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)らと並び、フランスの戦後モダンデザインを代表するデザイナーとして知られるようになります。

ムーユの照明を特徴づけるのが、黒く塗装された金属と有機的な曲線を描くアーム、そして光の方向に合わせて動かすことのできるシェードです。蜘蛛や植物など自然界の形態から着想を得ながらも、装飾として取り入れるのではなく、金属の強度や光の反射、身体の動きといった機能から形を導き出しました。複数のアームが放射状に広がる「Spider(スパイダー)」をはじめとする作品には、職人としての高度な技術と、彫刻的な造形を融合させたムーユ独自のデザインが表れています。

1960年代には蛍光管を用いた「Colonnes」シリーズなど、それまでの作品とは異なる新しい照明にも取り組みます。常に新しい素材や技術に目を向けながらも、光源と構造、素材の関係を突き詰める姿勢は一貫しており、照明器具を単なる道具ではなく、空間を構成する重要な要素として捉えていました。

現在、ムーユの作品は MoMAや Centre Pompidouをはじめとする世界各地の美術館・コレクションに収蔵されています。自身の工房で培った金属加工の技術をもとに、機能と造形を一体化させたムーユの照明は、1950年代のフランス・モダンデザインを代表する作品として、現在も高い評価を受けています。