
Jan de Vriesドレク・ヤン・デ・フリース
ヤン・デ・フリース(本名 デルク・ヤン・デ・フリース / Derk Jan de Vries)は、1960年代から80年代にかけて活躍したオランダ出身のデザイナー。
オランダで培われた構造的かつ合理的な美意識を携え、1960年代に当時のデザインの最前線であったイタリアへと渡ります。ミラノ近郊のセヴェーゾに拠点を置き、優れた木工技術を誇る製造会社「Maisa di Seveso(マイサ・ディ・セベソ)」との協働をスタート。オランダのミニマリズムとイタリアのクラフトマンシップが交差する、独自のデザイン言語を確立していきました。
彼の手がける家具は、直線的で建築的なコンストラクションを基本としながらも、角に施された絶妙なアールや無垢材の削り出しによって、冷たさを感じさせない有機的な温かみを同居させているのが特徴です。金物パーツを極力排除し、木材そのものを巧みに加工した円形のくり抜きハンドルなど、構造美と機能が一体となったディテールを追求しました。
1970年代に発表された代表作「Samara(サマラ)」シリーズでは、アッシュ材やビーチ材の澄んだ無垢フレームに、繊細なラタン(籐)編みやガラス、スチールといった異素材をハイブリッド。実用的でありながら空間に軽やかさと透明感をもたらすウォールユニットやダイニングチェアを生み出し、高い評価を獲得します。1980年代には、より引き算の美学を推し進めた「Linea Chiara(リネア・キアラ)」を手がけるなど、構造の純粋さとモジュール性を極限まで高めていきました。
そんな彼のデザイン哲学を象徴する視点として、次の思考が知られています。「形態は構造から生まれ、素材の対比が空間に静かな呼吸を与える。」異素材が織りなす構造の美と、丁寧な手仕事がもたらす佇まい。時代を超えて現代の空間にも静謐な「余白」を立ち上げるデ・フリースのプロダクトは、コレクティブル・デザインの市場において今なお異彩を放ち続けています。